2012/02/22

【産科補償】平成23年12月までに252件を補償対象に認定。

【ソース】

【要点など】

<補償認定数など>
  • 平成23年12月までに274件が審査され、252件が補償対象として認定された。10件が補償対象外、9件が再申請可能、3件が継続審査中。
  • 年度別では、平成21年生まれは、審査177件中認定158件。平成22年生まれは、審査94件中認定91件、平成23年生まれは審査3件中認定3件。
  • 平成21年生まれの総数が確定するのは平成26年末を過ぎて審査が完了した段階になってから。 
 <補償事例内訳など>
  • 補償対象252件中、一般審査(在胎週数33週以上かつ2000g以上)による認定が233件(約92.5%)、個別審査(在胎週数28週以上と所定基準)による認定が19件(約7.5%)。
  • 補償対象外19件中、先天要因または新生児期要因によるとされたものが4件、 週数28週以上の個別審査において補償対象基準をを満たさないものが6件。
  • 252件における申請から補償金支払いまでの平均期間は73日。
<損害賠償等との関係など>
  • 252件中、2件(0.8%)については訴訟を経ずに損害賠償が確定し、補償制度との調整が完了した。1件は補償申請前に賠償責任が確定していた。
  • 他に訴訟中が3件、提訴前交渉中が5件、証拠保全のみが8件。
  • 252件中平成23年12月末までに87件について原因分析報告書を送付済。87件中賠償請求等が行われた事案は8件(9.2%)で、うち2件は報告書送付後に賠償請求がなされた。 
  • 同制度(事務局?運営組織?)では「現在のところ、原因分析報告書が損害賠償請求等に影響をしているとは必ずしも言えない」と分析している。
<「原因分析に関するアンケート」結果など>
  • 2011年7月末から8月に、平成22年の報告書送付例20事例の保護者と分娩機関(搬送元4機関を含む)に送付。分娩機関24機関中17機関(70%)、保護者20事例中8例(40%)から回答。
  • 分娩機関17回答中、報告書にとても納得できたのは4機関、だいたい納得できたのは12機関、あまり納得できなかったのは1機関。
 <その他>
  • 報告書全文版の開示請求はこれまでに59件。 
  • 同一分娩機関における複数事案目の分析の結果、当初jの事案から改善がみられないと判断された場合や、1事案目であっても繰り返されるおそれがあると判断された場合は、原因分析委員会と運営組織の連名で報告書に別紙を添付して、一層の改善を求めることとしている。
  • 半年後を目途に改善事項等の取り組み状況の報告を求めている。

【不明点など】
  • 日本医師会医師損害賠償責任保険制度が把握する脳性麻痺紛争事案数の変化の有無について。
  • 補償制度発足後の上記賠償保険制度の財政状況の変化の有無について。
 【コメント】
  • 分娩時脳性麻痺事案がほぼ100%捕捉できることになった結果、個別事例の情報だけではわからなかった全体像の把握が進みつつあるように感じられます。ただ、制度自体の評価を行うには、もう少し推移を見守る必要もありそうです。

  • 事例が増えてきた結果、原因分析のため事実整理等の事務処理がなかなか進まなくなっているのではないかと感じられる場面も出てきています。正しい原因分析を行うためには、カルテから適切な事実認定が行われていることが不可欠です。その事実認定作業を丁寧かつ迅速に行いうるだけの事務体制が整っているのかどうかという点に、個人的には関心があります。

  • 同一分娩機関における同種事故の再発のおそれに対して、運営組織と原因分析委員会から別紙という形で改善を促す体制が整ったことは、過去の歴史を振り返ると、非常に画期的であると言えます。こうした形で「事故に学ぶ医療文化」がより根付いていくことを期待したいです。

  •  なお、岡井崇原因分析委員長のヒアリングの資料が添付されていますが、その末尾に、「産科医療補償制度-成果の達成目標-」とのスライドがありました。そこには、達成目標として「1.脳性麻痺訴訟の減少 2.脳性麻痺発生頻度の低下」と書かれています。本制度の成果は、あくまで脳性麻痺発生頻度の低下=医療の質の向上=の達成の有無によって評価すべきであると思います(訴訟の減少はあくまで発生頻度低下によってもたらされる附随的結果にすぎないと考えるべきです)。岡井委員長も、脳性麻痺発生頻度の低下を目標の2つのうちの1つに挙げていますので、医療の質の向上で評価するということを無視しているわけではないことは理解できますが、訴訟の減少が達成目標の第一に挙げられていることについては、違和感が残りました。



0 件のコメント:

コメントを投稿