2012/02/01

【判決報道】子宮外妊娠で死亡、受診指示上の過失を認定

【要約】

  • 2007年10月3日に当時36歳の女性が妊娠の疑いで岡崎市民病院を受診。
  • 患者帰宅後に出た検査結果から、医師が子宮外妊娠の可能性に気がついた。
  • 10月4日朝、女性から腹痛を訴える電話あり、11:00受診予定となった。
  • 女性が来院せず、病院から自宅に複数回の電話。13:00につながり腹痛で動けないと言われ、救急車要請。
  • 5日後に出血性ショックで死亡。
  • 2012年1月27日、名古屋地裁が病院側に約6700万円の賠償を命令。
  • 腹痛の訴えの電話があった時点で、子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝えて、できるだけ早く来院するよう勧めるべきだったと認定。
【ソース】

【不明点】
  • 判決全文(2012/02/01現在裁判所サイトに掲載なし)
  • 10月3日の患者帰宅後に出た「検査結果」の具体的内容(検査名、所見等)
【子宮外妊娠に関する類似裁判例】

東京地裁平成5年8月30日判決(判例時報1503号108頁)
  • 平成元年7月16日、当時20代半ばの女性が腹痛を訴えて受診。最終月経は5月8日から14日間。内診実施、エコーで胎嚢写らず。夜間のため妊娠反応約検査は実施せず。
  • 7月17日、痛み持続あり、再度受診。内診実施、血液検査と尿一般検査実施。
  • 7月24日、3度目の受診。未だ生理なし。同日夜にショック状態、搬送先で開腹手術→左卵管間質部妊娠による卵管破裂と判明。
  • 8月8日退院、8月18日まで通院。
  • 判決は、7月17日及び7月24日に尿中hCG検査を実施すべきと認定。
  • 激痛や死亡の危険にさらされたこと、いずれにせよ手術必要であったが早期診断により臍上部まで切開創が伸びることは回避されたと考えられること等を理由として、慰謝料200万円の支払を命令。
===以下、東京地裁平成5年8月30日判決から引用===

被告●●が、七月一七日の時点でhCG検査を実施しておれば高い確率で陽性反応を得ることができ、右陽性反応が得られた場合、前日実施した超音波検査の結果や不正性器出血、下腹部痛等の症状と合わせて、原告が子宮外妊娠であると強く疑い得たにもかかわらず、被告●●は、子宮外妊娠の検査に必要不可欠とされているhCG検査を実施しなかったばかりか、内診に異常がなく、不正性器出血もないと誤診したため、被告●●は、原告が子宮外妊娠であるとの疑いを持つことがなく、七月一七日の時点では骨盤腹膜炎と、また、同月二四日には、卵巣機能不全と誤診したものである。

そのため、右誤診がなければ、子宮外妊娠の疑いをもってなすべき処置、すなわち原告を入院させ、更に入念な検査(内視鏡による検査等)を実施し、診断が確定次第開腹して卵管を摘出することができたにもかかわらず、右処置を怠ったため、原告の卵管が破裂するに至ったものであると認めることができる。

したがって、被告●●は、不法行為に基づき、原告に生じた本件損害を賠償する責任を負う。

<中略>

前記認定事実によれば、原告は、被告●●の誤診の結果、長期間激しい下腹部痛に悩まされ、とりわけ七月二四日の午後一〇時ころ、卵管が破裂し卵管摘出手術が行われるまで下腹部の激痛に苦しみ、死亡する危険さえもあったこと、また、《証拠略》によれば、子宮外妊娠の確定診断があった場合の一般的な治療方法としては開腹手術によるしかないことが認められ、したがって、同被告の前記過失がなかったとしてもいずれにせよ右手術を実施する必要があったことが認められるものの、鑑定の結果によれば、本件と異なり、被告●●の誤診がなく子宮外妊娠で あるとの確定診断があった上で開腹手術をする場合には、下腹部臓器の病変であることから、臍上部まで切開創が伸びることはほとんどないことが認められると ころ、《証拠略》によれば、原告の腹部には下腹部から臍上部まで長さ約一二、三センチメートル(臍上部は数センチメートル)の手術痕が残ったことが認めら れる。以上の事実を総合し、本件諸般の事情を考慮すると、原告に生じた精神的苦痛を慰謝すべき金額は合計二〇〇万円が相当であると認められる。

===以上引用===

【補足】2012/02/07

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