2012/01/31

【裁判例】診療契約上の顛末報告義務として、予期しない重篤な後遺症を残した患者に対して診療録等を示しながら説明を行う義務があるとした事例

【要約】
大阪地裁平成16年(ワ)第8288号損害賠償請求事件
大阪地裁平成20年2月21日第23民事部判決


  • 診療契約上のてん末報告義務として、診療録に基づいた報告を必要とした事例。
  • 診療録の紛失によって、予期せぬ重篤な後遺症を被った患者に対し入院診療録ないし手術関連記録を開示できなかったことが、診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行に該当すると認定。
  • 裁判所は慰謝料30万円の支払を命令。
  • 一審で確定。

【ソース】
判例タイムズ1318,173-187,2010.5.1

【判決文より】

・・・以上によれば,転移癌の摘出及びその後の癌の再発防止のための放射線治療により一定の後遺症が残ることは,被告に治療上の過失がなかったとしても生じうる ことであると考えられるものの,原告にとっては予期しない身体障害1級という重篤な後遺症を有するに至っているのであるから,原告が,診療の経過につい て,診療録等に基づいて具体的な詳細を知りたいと考えることには十分な理由がある。

また,診療録を示しててん末の報告を行うことに支障があったとはいえな い。

そうすると,被告は,原告に対し,診療録等に基づいててん末報告を行うべき義務を負っていたものと解すべきである。・・・

・・・被告において,本件入院カルテ〔1〕ないし〔6〕及び本件手術関連記録〔1〕を隠匿して原告に開示しないのではなく,被告主張のとおり,被告において本件入院カルテ〔1〕ないし〔6〕及び本件手術関連記録〔1〕を紛失したために原告に開示できなかったとしても,被告は,本件入院カルテ〔1〕ないし〔6〕及び本件手術関連記録〔1〕を原告に開示できなかったのであるから,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を免れない。・・・

(3)以上によれば,被告には,本件入院カルテ〔1〕ないし〔6〕及び本件手術関連記録〔1〕を原告に開示できなかった限度で,診療契約上のてん末報告義務違反として債務不履行責任を負うこととなる。

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