2012/01/25

【裁判例】手技上の注意義務違反を認定した事例(胆管結石除去)


  • 那覇地方裁判所平成23年6月21日判決
  • 平成18年(ワ)第1358号損害賠償請求事件
  • 裁判官:平田直人 高橋明宏 早山眞一郎 
  • 出典:判例時報2126号105頁


 ===以下引用===

(3)本件外科手術(除去失敗と嵌頓)について

ア 結石除去の失敗と原因

丙川医師において、経胆のう管法、総胆管切開法の順で、本件外科手術を実施し、砕石鉗子、バルーン等も利用しながら原告の総胆管結石一個の除去を試みたが、これを実現できず、本件外科手術を断念したことは、前記(1)のとおり認められる。

そして、経胆のう管以外の方法で除去できなかった原因について、丙川医師は、経胆のう管法の実施中に結石を押し込めてしまうとともに、胆管内の壁に浮腫 が生じ、結石の嵌頓により、その他の結石処理法が成功しなかった旨を証言しており、これらの証言は、入院診療録中の経過表の記載と照らし合わせても、信用 し得るものである。

したがって、本件外科手術においては、経胆のう管法によって総胆管内の結石を除去することができず、むしろ嵌頓させてしまったため、最終的に結石の除去に成功しなかったものと認められる。

イ 結石嵌頓の原因

丙川医師は、経胆のう管法による採石について、結石を取り出す操作に手間取り、手術自体が通常より長時間かかったこと、手術操作により粘膜面を刺激する ことになり、長く刺激するほど浮腫は出やすくなること、結石を押し込めてしまったことと浮腫が合わさって結石が抜けなくなったことをそれぞれ証言し、他 方、なぜ操作に手間取ったかについては、「…うまく取れなかったとしか言いようがないです」と答えるのみで、何らその原因の説明ができていない。

経胆のう管法は、これを総胆管結石手術における第一選択とする病院も存在する一般的な手法であること、丁原意見書及び戊田意見書がいずれも総胆管切開手法まで行って結石除去ができないのは稀と指摘し、丙川医師自身、自己の経験において同様の結果に陥った症例は一例もなく、最終的に結石除去を断念せざるを 得ない事態は想定していなかった旨証言していることなどを考慮すると、経胆のう管法の実施中に総胆管切開やその他の方法によっても除去できない程度に結石 を嵌頓させてしまったことが手術そのものの困難さなどによるやむを得ない結果であるとは想定し難い。

もとより、結石の把持に手間取り、その結果として結石が嵌頓状態に陥ったことは、丙川医師自身が認めるところである。

そうすると、結石の把持が困難であったことについて、その他の原因の存在が認められない限り、本件外科手術における結石の嵌頓は、経胆のう管法の実施中における丙川医師の操作上の誤りに起因すると推認し得るものである。

そして、被告において、そのような原因関係につき具体的な主張立証を一切せず、また、 丙川医師からも説明がされない状況からすれば、具体的な態様を特定することはできないものの、丙川医師において、操作上の誤りにより、総胆管結石を総胆管 下部に嵌頓させてしまい、その結果として本件外科手術が失敗したものというほかない。

ウ 以上のとおりであるから、原告の主張するその他の過失につき検討するまでもなく、被告の丙川医師には本件外科手術における手技の実施上の過失が認められる。

 ===以上引用===

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