2012/01/23

日本脳炎とインフルエンザの予防接種を取り違え。トレーの取り違えが原因か。


  • 2011年12月29日、宇部市内の開業医が日本脳炎の予防接種をすべき3歳女児に、誤ってインフルエンザワクチンを接種。
  • 開業医側が気がついて、帰宅後の女児家族に連絡。
  • 日本脳炎ワクチンは誰にも接種されていない。
  • 母親が2012年1月10日に県宇部健康福祉センターに再発防止を電話で要請。
  • 別の児に接種する注射器のトレーとの取り違えが原因か。
  • 宇部市保健医療安全対策会議で検証と再発防止策を協議する予定。


【コメント】
宇部市の報道発表では言及がありませんが、報道によれば、現時点では注射器を載せたトレーの取り違えが原因と想定されているようです。

注射器の取り違えと聞くと、どうしても1999年2月11日に発生した都立広尾病院事件が思い起こされます。この件では、ヘパリン生食とヒビテングルコネート(消毒薬)を同じ処置台の上で同時に準備したことが原因の1つと指摘されています。

今回の件では、いずれも体に接種するものであったという点では都立広尾病院事件と異なっていますが、ワクチンの取り違え事例も以前から報じられています。

日本医師会作成の「医療従事者のための安全対策マニュアル」(平成19年11月)においても、都立広尾病院事件の類例として、様々な医薬品取り違え事故が集約されています。

その中には、麻疹の予防接種時に副作用経験のある患児に、風疹の予防接種のつもりで誤って麻疹の予防接種を施行した例も挙げられています(転帰不明とされていますが、最悪のシナリオとしては、アナフィラキシーショックによる死亡もありえたことが指摘されています)。

文献上では、次のような指摘があるようです。

■峯真人「予防接種する際に遭遇する問題点」母子保健情報59p126-p129,2009

「兄弟での異種ワクチン接種例,複数のワクチン希望者がほぼ同じ時刻に集中した例,問診・診察で否接種となった児の次順番の接種例などで事故がおこりやすく,対象児・カルテ・予診票・母子健康手帳・児に携帯させるワクチン名を記した札などを同時に移動させ,その場で複数者による確認することが必要である。」

今回の件でも、誤接種に至ったワークフローを丁寧に確認し、根本原因分析を踏まえた再発防止策が策定され、その情報が広く周知されることを期待したいと思います。


【ソース】
宇部市:予防接種の誤接種について
http://www.minato-yamaguchi.co.jp/yama/news/digest/2012/0119/8.html
医療安全推進者ネットワーク:都立・広尾病院医療過誤・事件~経過報告と提言~

【不明点】

  • 宇部市の報道発表中に言及されている”国の定めた「予防接種事故防止マニュアル」”の内容について。

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