2012/01/26

【刑事】生体腎移植臓器売買事件で医師と妻に実刑判決

【要点】

  • 腎不全だった医師が、妻と共謀の上、2009年10月から2010年4月、ドナー候補紹介の見返りとして暴力団組員に合計1000万円を支払ったが、トラブルで移植は頓挫。
  • 2010年7月に別の暴力団関係者からドナー候補の紹介を受け、謝礼800万円を支払い、同月中に移植を受けた。
  • いずれの候補者とも養子縁組をした。
  • 2012年1月26日、東京地裁は、医師に懲役3年(求刑・懲役4年)、妻に懲役2年6月(求刑同じ)の判決を言い渡した。
【ソース】

【関連事項】
【参照条文】
第十一条  何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくは提供したことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。

 何人も、移植術に使用されるための臓器の提供を受けること若しくは受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

 何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けることのあっせんをすること若しくはあっせんをしたことの対価として財産上の利益の供与を受け、又はその要求若しくは約束をしてはならない。

 何人も、移植術に使用されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けることのあっせんを受けること若しくはあっせんを受けたことの対価として財産上の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。

 何人も、臓器が前各項の規定のいずれかに違反する行為に係るものであることを知って、当該臓器を摘出し、又は移植術に使用してはならない。

 第一項から第四項までの対価には、交通、通信、移植術に使用されるための臓器の摘出、保存若しくは移送又は移植術等に要する費用であって、移植術に使用 されるための臓器を提供すること若しくはその提供を受けること又はそれらのあっせんをすることに関して通常必要であると認められるものは、含まれない。 

第二十条  第十一条第一項から第五項までの規定に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 前項の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従う。 


【本日の不明点】

  • 判決全文。
  • 日本移植学会の実態調査の中間報告の一次資料(2012/01/26現在、同学会のウェブサイト上に見あたらない。中間報告発表の記者会見告知資料は掲載されている)。
  • 同実態調査の最終結果。
【コメント】

上記の五学会共同声明では、次のような表現で移植医療関係者の危機感が示されていました。

===以下引用===
臓器移植は臓器の提供を前提とする医療であり、臓器の提供には社会の理解と移植医療に対する信頼が不可欠であります。このたびの腎臓売買による腎臓移植は、移植医療に対する社会の信頼を失わせかねないものであり、きわめて深刻な事態であると認識しております。
【中略】
このような非倫理的かつ違法な移植の根絶に向けて、あらゆる方策をもって全力を尽くす所存です。 
===以上引用===

日本移植学会による実態調査の中間報告については、昨年10月に次のように報じられていました。
  • 過去5年の生体腎移植実態調査を実施し中間報告した。
  • 221施設に実施し、9月末までに129施設から回答があった。
  • 非親族間の移植は8施設10例、養子縁組親子間の移植は4施設5例。
  • ドナーの意思確認時にレシピエントが同席する施設が28施設。
  • 高原史郎同学会理事長が、自発的意思が担保されているか確認の必要があると指摘。
http://mainichi.jp/select/science/news/20111011k0000e040015000c.html(現在はリンク切れ)

本日の判決報道を踏まえて、この中間報告原文を読んで見たかったのですが、本日現在、同学会のサイト等で、この資料を見つけられなかったことが残念です。

(ちなみに、同学会のサイトには、上記五学会共同声明の原文もみあたりませんでした)。

移植医療には生命倫理上の問題が常に関連しますので、社会との対話が重要です。
少なくとも、公表済みの資料などについては、わかりやすい広報がなされていることが望まれると思います。

実態調査の最終報告等については、引き続き注目したいと考えています。










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