2012/01/25

【事故報道】内視鏡による左腎臓摘出術時に右腎につながる血管を切断


  • 発生時期:2010年3月29日
  • 患者:腎がんの50代男性
  • 医療機関:独立行政法人国立病院機構金沢医療センター
  • 内視鏡による左腎摘出術時に右腎につながる血管を誤って切断。
  • 血管を縫合し、左腎を摘出。術後右腎機能回復せず、約10日後に右腎も摘出。6月までICU管理。11月末退院。透析のための他院通院継続中。
  • 2011年7月、病院が賠償金を支払う内容で示談成立。

【コメント】

報道内容からすると、内視鏡手術の際に血管同定を誤ったのではないかと思われる事案です。

院内で委員会を開催して、調査を実施し、国立病院機構本部には報告を実施したということですので、そうした検討の努力から得られた同種事故の再発防止のための教訓が全国の医療現場にフィードバックできるような対応が望まれます。

同病院は国立病院機構が開設者ですので、医療法施行規則に基づく医療事故情報収集等事業における報告義務医療機関に該当します。

本件についても、この報告義務に基づいて日本医療機能評価機構に報告がなされているはずです。

そこで、以下のサイトで事例情報を探してみました。



期間を2010年3月~11月として検索をかけたところ、ヒットしませんでしたが、期間を設定せず、「腎臓」「治療・処置」という条件で検索したところ、次の事例が出てきました。

事例ID:AA29F56186C840C3F

この事例の発生時期については非公表とされていますので、報道された事案と同一かどうかは特定できませんが、右腎動脈と上腸間膜動脈が切断されてしまったこと、途中で開腹術に切り替えられたこと等、かなり詳しい情報を得ることができます。

末尾に引用しましたので、ご参照下さい。

こうした情報が、同種の事故防止に役立てられることを期待したいです。


===以下引用===

【実施した医療行為の目的】

左腎細胞癌のため、腹腔鏡下左腎摘出術を実施した。

【事故の内容】

患者は検診にて左腎腫瘍を指摘され、手術目的にて入院し、腹腔鏡下にて左腎摘出術の予定となった。腹腔鏡下による手術操作にあたって、左腎静脈の剥離後、その頭側に平行に走る動脈を左腎動脈と認識し(後に右腎動脈と判明)切断した。

切断後、左腎静脈の血行遮断を行ったところ、同静脈の鬱血を認めたため、もう1本腎動脈がある可能性を考え、先に切断した動脈のさらに頭側に位置する動脈を剥離し切断した(後に上腸間膜動脈と判明)。

その後、左腎全体の剥離を進めたところ、本来の左腎動脈の存在に気づき、その動脈周囲からの出血をも認めるに至り開腹術に移行し、左腎摘出術を施行した。誤って遮断・切断した右腎動脈と上腸間膜動脈は、血管吻合にて再建し、吻合後には血流再開を確認している。

術後経過において播種性血管内凝固(DIC)の病態を併発、右腎臓の存在がDICをさらに悪化させる原因であると判断し、右腎臓の機能不全を確認して摘出術を実施した。

その1週間後に腹腔内出血を認め、緊急手術を施行したが明らかな出血源は特定できなかった。その約10日後再び腹腔内出血を認めたため、造影CTにより出血部位の検索を行った。

その結果、上腸間膜動脈吻合部近傍の仮性動脈瘤からの出血が疑われた。出血部位及び患者の一般状態から保存的加療を選択した。

その後、呼吸不全、腎不全、肝機能障害、感染症などの合併症を併発しているが、人工呼吸器による呼吸管理、透析、経管栄養、抗菌剤投与などにより、対応・治療している。

【事故の背景要因の概要】

腹部大動脈左側の剥離操作の際に左後腹膜腔内臓器を残さないように剥離面を意識しすぎた。

そのため大動静脈間まで剥離手術を行ったことを術中認識できていなかったため、誤った動脈を遮断し切断した。

【改善策】

1.背筋群を直視下に確認し、背側に位置する動脈であるという確認操作を最初に行うべきであった。

2.泌尿器科における腹腔鏡下手術は事故後直ちに中止するとともに、その他の診療科における腹腔鏡下手術においても十分な注意を払い実施するよう指示した。

===以上引用===

【ソース】
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=53411
国立病院機構金沢医療センター(2012/01/25現在本件に関する情報掲載なし)

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