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2012/03/05

【行政処分報道】刑事事件有罪判決のない2件の医療過誤を理由として、国が同一医師に対する戒告処分を決定。

【ソース】
http://www.asahi.com/national/update/0305/TKY201203050082.html

【要点】
  • 2012年3月5日、三重県四日市市の産婦人科医(71歳)に対し、戒告処分が決定。3月19日発効。
  •  2011年9月に、同医師に対しては、出産後の女性が死亡した件(業務上過失致死罪で罰金刑が確定)について戒告処分が下されていた。
  • 今回は、同医師が起こした脳性麻痺事故と死産事故の2件(いずれも刑事事件における有罪判決はない)についてあらたに戒告処分。再教育措置も再度行われる。
  • 刑事事件以外の医療事故を理由とする行政処分は本件までに3件のみ。
【関連情報】
===以下引用===
2  医師が第四条各号のいずれかに該当し、又は医師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一  戒告
二  三年以内の医業の停止
三  免許の取消し
===以上引用===
===以下引用===
 第四条  次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一  心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二  麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三  罰金以上の刑に処せられた者
四  前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
===以上引用===
===以下引用===
医師法第7条第2項及び歯科医師法第7条第2項に規定する行政処分については、医師、歯科医師が相対的欠格事由に該当する場合又は医師、歯科医師としての 品位を損するような行為があった場合に、医道の観点からその適性等を問い、厚生労働大臣はその免許を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命ずるもので ある。
【中略】
国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなかった医療過誤についても、医療を提供する体制や行為時点における医療の水準などに照らして、 明白な注意義務違反が認められる場合などについては、処分の対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法やその改善方策について、今後早急に検討を加え ることとする。  
【中略】
6)    業務上過失致死(致傷)
(2)    医療過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)
 人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師、歯科医師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に医師、歯科医師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤となる。
 司法処分においては、当然、医師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなる。
 行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らかな過失による医療過誤や繰り返し行われた過失など、医師、歯科医師として通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とする。
 なお、病院の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。
===以上引用===
※下線は引用者による。

【コメント】

行政処分制度は、「医道の観点」から医師等の適性等を問う制度であり、制度上は、「医師としての品位を損するような行為のあったとき」も処分の対象とされています。このように刑事処分と行政処分は、目的の異なる制度です。

しかしながら、現実には、医療過誤に関する医師の行政処分は、基本的に刑事処分の後追いという形で運用されており、行政処分としての独自性はほぼ失われています。
今回の産婦人科医への処分は、刑事事件とは別個に国が事実認定を行って下したものという点で、刑事処分の後追いに留まらないものと言えます。

もっとも、現状の医道審議会は、多くの事案の事実認定を行い得るような体制にはありません。また、医療事故の網羅的な届出・報告制度も確立していません。報告義務が課せられているのは、特定機能病院等の一部医療機関のみであり、しかも義務を負う病院間での届出実施状況には大きな差異があります。

※参考

したがって、今後も刑事処分の後追いとして行政処分制度が運営されていくという流れが変わるとは思えません。同様の事故を起こしたにも関わらず、処分がされるケースもあれば、処分されないケースもあるという、不平等・不透明な状況は、今後も続くことが予想されます。

こうした不透明な状況を健全なものとするためには、まず、医療事故事案をきちんと把握し、どのような事故に対し、どのような処分や再教育が必要なのかを丁寧に検討していく必要があります。
そのためにも、日本医学会加盟主要19学会共同声明の提案するような、医療事故の届出制度が早期に創設される必要がありますが、残念ながら今なお実現の目途は立っていません。

大変に残念です。 

2012/02/23

【カンガルーケア】日本産婦人科医会が会員に文書による注意喚起を実施。

【ソース】
日本産婦人科医会:出生直後に行う「カンガルーケア」について

【要点】
  • 平成23年12月付けで、日本産婦人科医会が寺尾俊彦会長名で、同会会員に対し、出生直後に行うカンガルーケア実際の際の安全管理について、注意を喚起した。
  • 要点は、次の4点。
  1. 選択・除外基準を含む施設毎のマニュアルを作成すること
  2. 母親と家族への十分な事前説明を経た上で希望を確認すること 
  3. 医療者による十分な観察を行こと(母による観察の限界の認識)
  4. 医療者が新生児蘇生に熟練していること
  • 原文(抜粋)は以下のとおり。



 ===以下引用===

1. 適 応 基 準・除外基準等を含めて、「カンガルーケア・ガイドライン」( カンガルーケア・ガイドラインワーキンググループ編;h t t p : / / m i n d s . j c q h c . o r . j p / s t c / 0 0 6 8 / 0 0 6 8 _ C o n t e n t s T o p . h t m l )等を参考にした施設ごとの実施マニュアルを作成する。
 

2. 母 親 ( お よ び 家 族 ) に 対 し て 、 新 生 児 の 顔 色 や 呼 吸 等 の 観 察 の重要性および新生児のポジショニング等を含めた十分な事前説明を行い、母親( および家族) が「カンガルーケア」を理解し希望していることを確認した上で実施する。
 

3. 母 親 ( お よ び 家 族 ) が 新 生 児 の 観 察 を 自 力 の み で 行 う こ と に は限界があるため、必ず医療側も十分な観察を行う。
 

4. 「カンガルーケア」実施に携わる医療者は新生児蘇生に熟練している必要がある。

  ===以上引用===

【参考サイト】

2012/02/01

【判決報道】子宮外妊娠で死亡、受診指示上の過失を認定

【要約】

  • 2007年10月3日に当時36歳の女性が妊娠の疑いで岡崎市民病院を受診。
  • 患者帰宅後に出た検査結果から、医師が子宮外妊娠の可能性に気がついた。
  • 10月4日朝、女性から腹痛を訴える電話あり、11:00受診予定となった。
  • 女性が来院せず、病院から自宅に複数回の電話。13:00につながり腹痛で動けないと言われ、救急車要請。
  • 5日後に出血性ショックで死亡。
  • 2012年1月27日、名古屋地裁が病院側に約6700万円の賠償を命令。
  • 腹痛の訴えの電話があった時点で、子宮外妊娠の可能性が高いことや危険性を具体的に伝えて、できるだけ早く来院するよう勧めるべきだったと認定。
【ソース】

【不明点】
  • 判決全文(2012/02/01現在裁判所サイトに掲載なし)
  • 10月3日の患者帰宅後に出た「検査結果」の具体的内容(検査名、所見等)
【子宮外妊娠に関する類似裁判例】

東京地裁平成5年8月30日判決(判例時報1503号108頁)
  • 平成元年7月16日、当時20代半ばの女性が腹痛を訴えて受診。最終月経は5月8日から14日間。内診実施、エコーで胎嚢写らず。夜間のため妊娠反応約検査は実施せず。
  • 7月17日、痛み持続あり、再度受診。内診実施、血液検査と尿一般検査実施。
  • 7月24日、3度目の受診。未だ生理なし。同日夜にショック状態、搬送先で開腹手術→左卵管間質部妊娠による卵管破裂と判明。
  • 8月8日退院、8月18日まで通院。
  • 判決は、7月17日及び7月24日に尿中hCG検査を実施すべきと認定。
  • 激痛や死亡の危険にさらされたこと、いずれにせよ手術必要であったが早期診断により臍上部まで切開創が伸びることは回避されたと考えられること等を理由として、慰謝料200万円の支払を命令。
===以下、東京地裁平成5年8月30日判決から引用===

被告●●が、七月一七日の時点でhCG検査を実施しておれば高い確率で陽性反応を得ることができ、右陽性反応が得られた場合、前日実施した超音波検査の結果や不正性器出血、下腹部痛等の症状と合わせて、原告が子宮外妊娠であると強く疑い得たにもかかわらず、被告●●は、子宮外妊娠の検査に必要不可欠とされているhCG検査を実施しなかったばかりか、内診に異常がなく、不正性器出血もないと誤診したため、被告●●は、原告が子宮外妊娠であるとの疑いを持つことがなく、七月一七日の時点では骨盤腹膜炎と、また、同月二四日には、卵巣機能不全と誤診したものである。

そのため、右誤診がなければ、子宮外妊娠の疑いをもってなすべき処置、すなわち原告を入院させ、更に入念な検査(内視鏡による検査等)を実施し、診断が確定次第開腹して卵管を摘出することができたにもかかわらず、右処置を怠ったため、原告の卵管が破裂するに至ったものであると認めることができる。

したがって、被告●●は、不法行為に基づき、原告に生じた本件損害を賠償する責任を負う。

<中略>

前記認定事実によれば、原告は、被告●●の誤診の結果、長期間激しい下腹部痛に悩まされ、とりわけ七月二四日の午後一〇時ころ、卵管が破裂し卵管摘出手術が行われるまで下腹部の激痛に苦しみ、死亡する危険さえもあったこと、また、《証拠略》によれば、子宮外妊娠の確定診断があった場合の一般的な治療方法としては開腹手術によるしかないことが認められ、したがって、同被告の前記過失がなかったとしてもいずれにせよ右手術を実施する必要があったことが認められるものの、鑑定の結果によれば、本件と異なり、被告●●の誤診がなく子宮外妊娠で あるとの確定診断があった上で開腹手術をする場合には、下腹部臓器の病変であることから、臍上部まで切開創が伸びることはほとんどないことが認められると ころ、《証拠略》によれば、原告の腹部には下腹部から臍上部まで長さ約一二、三センチメートル(臍上部は数センチメートル)の手術痕が残ったことが認めら れる。以上の事実を総合し、本件諸般の事情を考慮すると、原告に生じた精神的苦痛を慰謝すべき金額は合計二〇〇万円が相当であると認められる。

===以上引用===

【補足】2012/02/07

2012/01/19

羊水塞栓症によるDICの患者に対する輸血手配が30分程度遅延したことについて、期待権侵害を理由とする慰謝料を認めた事例

大阪地方裁判所平成20年(ワ)第7635号
平成23年7月25日第20民事部判決


【判示抜粋】


患者が適切な医療行為を受けることができなかった場合に,医師が,患者に対して,適切な医療行為を受ける期待権の侵害の みを理由とする不法行為責任を負うことがあるか否かは,当該医療行為が著しく不適切なものである事案について検討し得るにとどまるべきものである(最高裁 判所平成21年(受)第65号平成23年2月25日第二小法廷判決・判例時報2108号45頁参照)。


<中略>


前記4(2)〔ア〕の電話連絡の過誤により,輸血の緊急手配が少なくとも30分程度は遅れた点については,輸血の依頼をすれば輸血できる医 療体制が一応備わっている本件病院にとっては,本件病院医師がDICを疑って緊急の輸血手配が必要と判断した際には,薬局の開業時間内外を問わず,医師な いし看護師ら医療従事者において速やかに赤十字血液センター等の血液供給機関に電話連絡ができるように日頃から準備しておくことが,必要不可欠であり,か つ容易であって、基本的な義務と考えられる。


そして,前記4(2)で検討したように,当時の花子の病態にかんがみ,遅くとも19時30分ころの時点では輸 血を開始すべきであったのに対し,上記のように輸血の緊急手配が30分程度遅れることがなければ,赤十字血液センターから本件病院への血液到着は18時 50分ころとなり,30分程度は要するFFPの解凍を経ても,19時30分にはFFPの輸血から開始することが可能であったといってよい。


ところが,丁谷 医師が輸血手配を依頼した時刻には薬局が閉業していたとはいえ,一刻を争う緊急事態に電話連絡の過誤により30分も輸血の手配が遅れ,これによって輸血の 開始も本来あるべき時点から30分も遅れたことは,重過失ともいうべき著しく不適切な措置と評価せざるを得ない。したがって,当時,本件病院医師によって 弛緩出血によるDICを疑われ,可能な限り速やかに輸血されるという治療行為を受けることを期待できた花子は,本件病院医師らの著しく不適切な上記措置に より,そのような期待権を侵害されたものと認めるのが相当である。


併せて,本件における結果が花子の死亡という重大なものであり,上記不適切な措置が花子 の生死を分ける重要かつ緊急な局面で起こっていることを考慮するならば,上記措置は慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価されるので,花子に対す る不法行為を構成するというべきである。

【コメント】
  • 法廷意見として期待権侵害に初めて言及した最高裁平成23年2月25日第二小法廷判決の枠組みに基づいて、期待権侵害による慰謝料を肯定した判決。
  • 慰謝料額を60万円とした。


【ソース】
判例タイムズ1354号192頁

カンガルーケア中の心肺停止で脳障害、松山地裁に提訴


  • 2011年に今治市内の私立医療機関で出生した新生児が、カンガルーケア中に心肺停止となり、脳障害を負ったことについて、2011年1月18日までに、両親らが松山地裁に提訴した。
  • 訴状では、十分な事前説明がないままカンガルーケアを開始し、約30分間両親と新生児だけの状態となり、助産師が戻った際に新生児は一時心肺停止に至ったとのこと。

【コメント】
名古屋大学医学部附属病院における類似の事故では、大学が事故の事実経過と再発防止策を公表しています。
■名古屋大学医学部附属病院:カンガルーケア時に発生した事故について

カンガルーケアを実施するのであれば、次のような要件が不可欠であると思います。
1)児が、カンガルーケアの実施を許容できる身体状況であるを医師が確認していること
2)ケア実施中に医療従事者が経過をずっと観察できる体制が確保されていること
3)カンガルーケアの実施中に心肺停止となって重度後遺症等が生じた事例があるといったリスク説明が事前に十分なされた上でなお両親が実施を希望していること  等


 【ソース】
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-01-19_28705/
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20120119/news20120119730.html