2012/02/20

【判決報道】脳動脈瘤コイル塞栓術と開頭クリッピング術の比較説明の不備とコイル塞栓術の手技上の過誤を認定。

【ソース】
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2012021790201603.html
http://www.asahi.com/national/update/0217/NGY201202170030.html
http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C93819496E3E5E2E2838DE3E5E2E0E0E2E3E0919CEAE2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E4
http://mainichi.jp/life/health/medical/news/20120218k0000m040101000c.html

【要点】

  • 名古屋地裁平成24年2月17日判決(堀内照美裁判長)。
  • 藤田保健衛生大学病院開設者に対し、約1億7000万円の賠償を命令。
  • 2006年4月、50代女性に脳動脈瘤があることが判明。
  • 2006年8月に脳動脈瘤コイル塞栓術を実施した際に、脳動脈瘤から出血。
  • くも膜下出血、脳梗塞により左半身麻痺が残存。夫が退職して介護を担当。
  • 開頭術の方がリスクが少ないことの説明を欠いたと認定。説明を尽くしていれば開頭術を選択したと認定。
  • カテーテル操作の手技上の過誤も認定。
【報道上の不明点等】
  • 判決原文未入手。2012/02/20現在最高裁サイトに掲載なし。
  • 瘤の大きさ、部位。
  • 脳動脈瘤損傷に至る機序の詳細。
【コメント】

日本医療機能評価機構の報告事例検索サイトにおいて、「事故事例報告」「脳動脈瘤」「塞栓術」で検索をかけたところ、8事例がヒットしました。

そのうち、術中に瘤の破裂や虚血性合併症を来した事例について、事案の概要を以下に転載しておきます(下線は当ブログ筆者によるもの)。

個別事例の個々の分析だけではなく、同種事例を集積し、それらを比較検討することによって、原因分析が促進されるはずです。

実際に産科医療保障制度においてはそういった総合的なレビューが行われています。未破裂脳動脈瘤治療中の重大有害事象についても、そうした網羅的に集積された事例に対する総合的なレビューがなされることを期待したいです。

 【実施した医療行為の目的】
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血に対して、瘤内塞栓術+母血管閉塞術 水頭症に対して脳室ドレナージ術 重症くも膜下出血に対してバルビツレート療法
【事故の内容】
右椎骨動脈瘤に対し、全身麻酔下にコイル塞栓術を施行すべく、動脈瘤内にマイクロカテーテルを誘導していた。その際にカテーテルが瘤内で跳ねるような挙動を示し、瘤外(血管外)に逸脱、直後の造影で造影剤の漏出を認め、動脈瘤の破裂及びくも膜下出血を来したと判断した。
【事故の背景要因の概要】
不明
【改善策】
不明

【実施した医療行為の目的】
未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

【事故の内容】
前交通動脈未破裂動脈瘤に対するコイル塞栓術中。5本目のコイルを挿入中に、瘤内に留置してあったマイクロカテーテルが移動 し、瘤壁を穿孔、くも膜下出血の状態となった。止血のためへパリンをリバース、薬剤による降圧を行い、自然に止血されたことを確認。この時点で頭痛、嘔気 を訴えるものの、患者の神経症状に変化なし。より完全な止血を目指して、全身状態の安定化のための全身麻酔の導入を行い、塞栓術を続行。良好な塞栓が得ら れたこと、再出血をしていないことを確認し、塞栓術を終了。くも膜下出血の排出のための髄液腰椎ドレナージ追加。血圧管理のための全身麻酔2日間の継続を 行った。意識清明、神経症状の悪化なし。脳血管れん縮の予防治療を行った。

【事故の背景要因の概要】
カテーテルが不安定で容易に瘤外に脱出しやすい状態であったため、通常よりカテーテルを瘤内にやや強めに押し込んだことで、カテーテルが予想以上に移動したと考えられる。

【改善策】
常にカテーテルにかかる圧力を確認しながら、最新の注意でカテーテル操作を行うように心がける。 合併症発生の術前説明を十分に行う。



【実施した医療行為の目的】
動脈瘤に対して、開頭手術による加療が困難と判断されたため、ステント併用による脳動脈瘤コイル塞栓術(血管内治療)を実施した。
【事故の内容】
全身麻酔のもと手術を施行。血管の蛇行が強く、カテーテルの誘導やステントの誘導に難渋した。最終的に、ステントを病変部ま で誘導することができず、また、更なる治療の継続は血管穿孔などの致死的な合併症をきたす可能性が高いと判断されたため、手術を断念せざるを得なかった。 麻酔覚醒後に、右顔面麻痺、右上下肢麻痺が出現していることが分かった。症状発見後直ちに頭部CTを施行した。その結果,出血性病変は否定されたため,虚血性合併症が生じたものと判断した。
【事故の背景要因の概要】
詳細は不明であるが術後要因の検討を行い、現段階ではカテーテルの複数本の同時使用によって、脳血流の低下が長時間にわたり起こったためと推察している。
【改善策】
術式の検討。


【実施した医療行為の目的】
右椎骨動脈瘤に対するコイル塞栓術(全身麻酔下)

【事故の内容】
右椎骨動脈瘤に対し、全身麻酔下でコイル塞栓術治療時に汎用しているマイクロカテーテルを用いて同治療を施行。動脈瘤内にマ イクロカテーテルを誘導していた。その際にカテーテルが瘤内で跳ねるような挙動を示し、瘤外(血管外)に逸脱。直後の造影で、造影剤の漏出を認め、動脈瘤 の破裂及びくも膜下出血を来したと判断した。

【事故の背景要因の概要】
カテーテルを動脈瘤内に誘導中に動脈瘤内での跳ね。

【改善策】
不可抗力的な事例である。今後同治療を行う際、綿密な計画、慎重な操作をこれまでと同様に行う。

【実施した医療行為の目的】
未破裂脳動脈瘤に対する根治術

【事故の内容】
左内頸動脈未破裂動脈瘤に対するコイル塞栓術中、動脈瘤からの出血あり。脆弱な動脈瘤壁の破裂によるものと考えられた。出血 に対する止血処置(へパリンのリバース、バルーンによる閉塞、コイルの追加充填)にて止血を得たが、この動脈瘤に対する根治術が必要と考え、緊急手術施行 (開頭外減圧術)。

【事故の背景要因の概要】
推測だが、脳動脈瘤の壁が非常に脆弱だった可能性がある。

【改善策】
予測不能な術中破裂であった。

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