2012/03/27

【判決レビュー】病院内浴室で熱傷を負った高齢女性入院患者が死亡した事例(千葉地裁平成23年10月14日判決)

【ソース】
 平成21年(ワ)第1651号 損害賠償請求事件(医療)
【要点】
  • 両変形性膝関節症の手術目的で入院した当時79歳の女性が、平成20年11月6日(手術前日)午後2時に入浴のため浴室に入ったところ、約40分後に浴槽内で全身熱傷の状態で発見された。翌日死亡。
  • 浴室に入った時点で浴槽は空であった。発見時、給湯栓から55-56℃の湯が出たままとなっていた。 浴槽の栓は閉まっていなかったが、患者の体が排水口をふさいでおり、20-30cmの深さで湯が溜まっていた。
  • 患者に認知症はなく、判断力に問題はなかったが、患者は給湯栓を開くと55-56℃の湯が出ることを知らず、浴室まで付き添った看護師もそのことを説明していなかった。
  • 裁判所は、①給湯給水設備の使用方法及び熱傷を負うおそれのある熱湯が出ることを説明しなかった点、②浴室に入ってから30分が経過した後も安全確認を行わなかった点について病院の過失を認定した。
  • 被告は、午後3時38分の血液検査でAST、LDH、CPKの上昇が、午後6時5分にはトロポニンTの上昇が認められたこと等を理由として、急性心筋梗塞を発症して意識喪失に至って転倒し、その結果熱傷を負ったと主張したが、裁判所は、上記過失と熱傷による患者の死亡の因果関係を肯定した。
  • 被告は、患者の心筋梗塞発症の結果への寄与による過失相殺類推適用を主張したが、裁判所は採用せず。
  • 裁判所は、病院に対し、1925万円と遅延損害金の支払いを命令。内訳は慰謝料1600万円(近親者慰謝料含む)、葬儀費150万円、弁護士費用175万円。

【コメント】

こうした痛ましい事故の再発を防止するには、患者が利用する設備に、こうした熱湯の出る設備があること自体を改善する必要があると考えられます。本欄をお読みになった医療関係者の方には、自院内の浴室の給湯栓の状況をご確認いただければと思います。

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