http://www.asahi.com/national/update/0305/TKY201203050082.html
【要点】
- 2012年3月5日、三重県四日市市の産婦人科医(71歳)に対し、戒告処分が決定。3月19日発効。
- 2011年9月に、同医師に対しては、出産後の女性が死亡した件(業務上過失致死罪で罰金刑が確定)について戒告処分が下されていた。
- 今回は、同医師が起こした脳性麻痺事故と死産事故の2件(いずれも刑事事件における有罪判決はない)についてあらたに戒告処分。再教育措置も再度行われる。
- 刑事事件以外の医療事故を理由とする行政処分は本件までに3件のみ。
- 医師法7条2項
===以上引用===
- 医師法4条
第四条 次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがある。
一
心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二
麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三
罰金以上の刑に処せられた者
四
前号に該当する者を除くほか、医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者
- 医道審議会医道分科会「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」(2002年12月13日)
===以下引用===
医師法第7条第2項及び歯科医師法第7条第2項に規定する行政処分については、医師、歯科医師が相対的欠格事由に該当する場合又は医師、歯科医師としての
品位を損するような行為があった場合に、医道の観点からその適性等を問い、厚生労働大臣はその免許を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命ずるもので
ある。
【中略】
国民の医療に対する信頼確保に資するため、刑事事件とならなかった医療過誤についても、医療を提供する体制や行為時点における医療の水準などに照らして、
明白な注意義務違反が認められる場合などについては、処分の対象として取り扱うものとし、具体的な運用方法やその改善方策について、今後早急に検討を加え
ることとする。
【中略】
6) 業務上過失致死(致傷)
(2) 医療過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)
人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師、歯科医師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に医師、歯科医師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤となる。
司法処分においては、当然、医師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなる。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らかな過失による医療過誤や繰り返し行われた過失など、医師、歯科医師として通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とする。
なお、病院の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。
(2) 医療過誤(業務上過失致死、業務上過失傷害等)
人の生命及び健康を管理すべき業務に従事する医師、歯科医師は、その業務の性質に照し、危険防止の為に医師、歯科医師として要求される最善の注意義務を尽くすべきものであり、その義務を怠った時は医療過誤となる。
司法処分においては、当然、医師としての過失の度合い及び結果の大小を中心として処分が判断されることとなる。
行政処分の程度は、基本的には司法処分の量刑などを参考に決定するが、明らかな過失による医療過誤や繰り返し行われた過失など、医師、歯科医師として通常求められる注意義務が欠けているという事案については、重めの処分とする。
なお、病院の管理体制、医療体制、他の医療従事者における注意義務の程度や生涯学習に努めていたかなどの事項も考慮して、処分の程度を判断する。
===以上引用===
※下線は引用者による。
【コメント】
行政処分制度は、「医道の観点」から医師等の適性等を問う制度であり、制度上は、「医師としての品位を損するような行為のあったとき」も処分の対象とされています。このように刑事処分と行政処分は、目的の異なる制度です。
しかしながら、現実には、医療過誤に関する医師の行政処分は、基本的に刑事処分の後追いという形で運用されており、行政処分としての独自性はほぼ失われています。
今回の産婦人科医への処分は、刑事事件とは別個に国が事実認定を行って下したものという点で、刑事処分の後追いに留まらないものと言えます。
もっとも、現状の医道審議会は、多くの事案の事実認定を行い得るような体制にはありません。また、医療事故の網羅的な届出・報告制度も確立していません。報告義務が課せられているのは、特定機能病院等の一部医療機関のみであり、しかも義務を負う病院間での届出実施状況には大きな差異があります。
※参考
したがって、今後も刑事処分の後追いとして行政処分制度が運営されていくという流れが変わるとは思えません。同様の事故を起こしたにも関わらず、処分がされるケースもあれば、処分されないケースもあるという、不平等・不透明な状況は、今後も続くことが予想されます。
こうした不透明な状況を健全なものとするためには、まず、医療事故事案をきちんと把握し、どのような事故に対し、どのような処分や再教育が必要なのかを丁寧に検討していく必要があります。
そのためにも、日本医学会加盟主要19学会共同声明の提案するような、医療事故の届出制度が早期に創設される必要がありますが、残念ながら今なお実現の目途は立っていません。
大変に残念です。
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